モンゴロイドユニット再生

三上敏視

 

 

 

7月27日にひょんなことから青山のCayというところで鎌田東二さん、細野晴臣さんと演奏することになった。鎌田さんと細野さんは、かつてあった「猿田彦大神フォーラム」の世話人代表であり、私も世話人の一人だった。東京自由大学の人脈とも太くつながっていたもので、この三人での演奏はしばらくできないだろうと思っていたから、感慨深かった。

それというのも、細野さんはこのところアメリカの古い音楽、おもにフォークソングを研究、かつ歌っていて、環太平洋モンゴロイドユニットのような演奏は出来ないと言っていたからである。私もてっきり細野さんは断るだろうと思っていたので、参加すると知った時は嬉しいサプライズだった。

この日の演奏はいろいろあったけど、リハーサル無しのぶっつけ本番だったのでほとんどが「神ながら」の演奏。終わりの方では木津茂理さんも飛び入りで歌ってくれた。

細野さんも猿田彦神社でのモンゴロイドユニットでの奉納演奏を「神ながら」と考え、大事に思い、楽しんでいたし、メンバーそれぞれ同じ思いで参加していた。猿田彦神社での演奏とは似ているようでまた違う感じになったけど、「今の神ながら」として復活した思いを強くした。

この「神ながら」は、今私が追求している「伝承音楽」、おもに神楽を中心として民衆や村の神職たちによって何百年も伝えられてきた音楽たちの元になる、「形になる前の音楽への衝動」が強いもので、聞いていた人たちそれぞれが違う受け取り方をしただろうけれど、音楽の原点として非常に貴重なものであるし、「神ながら」の感覚がないと出来ないものだと思っている。

東京自由大学に関係する人たちもたくさん来てくれたが、そのあたり、わかってもらえたと思っている。

 

「音楽への衝動」は古代人が洞窟に絵を描いた衝動と同じものだと思うので、時々、このように機会をもらえるのはとてもありがたいし、鎌田さん、細野さんも「またやりましょう」と言っていた。そして待っているだけでなく、自分でもそのような場を作らなければならないし、この「神ながら」の感覚もまた伝承していかねばと思った。

 

この時の動画は以下です。友人がスマホで写真を撮る合間に撮った動画なのでほんの一部だけど、限定公開でYouTubeにアップしました。

 

 

 

三上 敏視/みかみ としみ

音楽家、神楽・伝承音楽研究家。1953年 愛知県半田市生まれ、武蔵野育ち。93年に別冊宝島EX「アイヌの本」を企画編集。95年より奉納即興演奏グループである細野晴臣&環太平洋モンゴロイドユニットに参加。

日本のルーツミュージックとネイティブカルチャーを探していて里神楽に出会い、その多彩さと深さに衝撃を受け、これを広く知ってもらいたいと01年9月に別 冊太陽『お神楽』としてまとめる。その後も辺境の神楽を中心にフィールドワークを続け、09年10月に単行本『神楽と出会う本』(アルテスパブリッシン グ)を出版、初の神楽ガイドブックとして各方面から注目を集める。神楽の国内外公演のコーディネイトも多い。映像を使って神楽を紹介する「神楽ビデオ ジョッキー」の活動も全国各地で行っている。現在は神楽太鼓の繊細で呪術的な響きを大切にしたモダンルーツ音楽を中心に多様な音楽を制作、ライブ活動も奉 納演奏からソロ、ユニット活動まで多岐にわたる。また気功音楽家として『気舞』『香功』などの作品もあり、気功・ヨガ愛好者にBGMとしてひろく使われて いる。多摩美術大学美術学部非常勤講師、同大芸術人類学研究所(鶴岡真弓所長)特別研究員。