連作「会いたい」Ⅰ
また おいで
青柳 和枝
確かにあることがわかる
確かにあることを知ってる
目に見えないけれど
目には見えなくても
それは
光の届かないほど深い海の底に
あるいは 彼岸花の
枯れたかのように茶色になった
幾本もの細長い葉の下の土の中に
それから
真昼の星も
それでも やっぱり
わからない
知識や経験のそとで
目に見えないもの
赤や紫の外を
目で見ることはできなくても実感したくて
手を伸ばしてみたくなる
思いをめぐらしてみる
祈ってみる
笑ったり泣いたりしながら
庭に尾の長い鳥が来た
カラスとスズメとの中ぐらいの大きさで
頭が白い
新緑のモミジの枝を二度三度揺らしてから
東の方に飛んで行った
きみの名前はなんて言うの?
きみは誰?
また おいで
待ってるから
連作「会いたい」Ⅰ より
青柳 和枝/あおやぎ かずえ
詩人。山梨県在住、1957年生。詩集「青が弾けた」「ウ キ セラ ~何が起こるの?~」。夫とともに<カフェ甲斐茶寮>経営。