―夢の地平線―

Machico

 

 

近頃、夢の世界がおもくて、落ちてきそうです。

現実世界の境界線を夢の内圧がおしてきて、弾きだされたように目覚めると、おもわず「ああ疲れた」といってしまうくらい、夢にリアリティを感じます。

目覚めると、窓からみえる小さな空にほっとして、「ここにいる」と確認してから起きあがります。

 

小さな頃にくりかえし見ていた夢は、原爆の復興から間もない広島の、砂ぼこりをまきあげる広い道を、ピンク色がかった象の隊列が、蜃気楼のように揺れながら、ゆっくりと行進するというものでした。それはきっと、大博覧会にきてた木下サーカスで、初めてみた象の巨大さが、深く心に残っていたのでしょう。お気に入りの夢だったので、夢の引き出しから何度もだしては見てました。

あの埃っぽい子供の頃に記憶している広島の、極端に平べったい無彩色の町並みや、基町のバラックの風景は、3.11東日本大震災で被災した東北の町の風景と不思議とかさなります。復興のシンボルとなった陸前高田市の松の木のように、広島には、被爆しても生き残った木が何本かあります。

 

広島の東をながれる京橋川の橋のたもとに、被爆した一本の柳の木が、長く雨風に耐えて立っていました。いつかの通りすがりに気づくと、幹が空洞化して樹皮を残すばかりに様変わりし、そのぽっかりと開いた空洞にコンクリートが流し込まれ、大きな金属のつえが胴体を支えてサイボーグのように変身し、被爆樹のモニュメントになっていました。朽ちてもなお土に帰れない大役をおった柳の木を、風が透明な腕で抱きしめていきました。

 

「物心ついた時からカラーの夢しかみたことがないし、みた夢を覚えてる」と友人にはなすと、「きっと夢が未来からのメッセージだと思うから、分析してみたら」とすすめられましたが…そうなのかな。ピンクの象の夢をみる人は意外といるみたいで、昔、ピンクの象を押入れでかってる夢をみるという人がいました。

さあ今夜も、夢の地平線を歩いてみましょう。

 

 

 

桑原 真知子/くわはら まちこ

広島県生、空見人。多摩美術大学絵画科油画課卒業。広島大学文学部考古学科研究生修了。草戸千軒町遺跡にて、遺物の漆椀の図柄の模写や土器の復元を行う。シナジェティクス研究所にてCG担当とモジュール作成などを経て、現在は魂を宙に通わせながら作家活動を行っている。