ー秋想ー

桑原 真知子


 

    

水の皮膜を 風がつまんで過ぎて行く       

水面をすべる鳥の影

 

昨日の視線が細い指で 

こぼれた秋を すくい取る

 

浸した足は 水の粒子と交感し合い

僕の身体 水を吸い上げ 

空に向かって 両手広げて 伸びて行く

 プリズム       ふるわせ  

重なる カサコソ  ゆるやかな ソットソット

背中を丸めた枯れ草が 電車の風で舞い上がる


悲しみが

燃えながら立っている

暮れかかる丘の上

白く点のように輝きはじめた星々は

眠らないでそれを見つめる

 

 


桑原 真知子/くわはら まちこ

広島県生、空見人。多摩美術大学絵画科油画課卒業。広島大学文学部考古学科研究生修了。草戸千軒町遺跡にて、遺物の漆椀の図柄の模写や土器の復元を行う。シナジェティクス研究所にてCG担当とモジュール作成などを経て、現在は魂を宙に通わせながら作家活動を行っている。