自然に学ぶ撮影現場  

比嘉 真人


 

 

私の長編記録映画「久高オデッセイ」との関わりは現在制作中の第三部風章からで、去年6月から大重監督と共に久高島に通い、撮影を進めています。


この映画に脚本はありません。自らの身体を久高島へ運び、島と向き合った時、自ずとシナリオが流れ始めます。自然の流れ、導きを脚本と認めます。

そこから大重監督が撮影の指示を始めます。


それは、常に思考とは異なる体感であり、価値観であります。

それは、風のそよめきや海の波すがた、朝日や夕日、虫や植物からの物語であります。

岩や石もメッセージを宿しています。島の蝶は人懐こく、とても優しい感じがします。


島の人との交流もあります。

それは政治や経済が絡む話しがやっと登場してきます。

それは島で生きる人びとの術であり、また島と現代との均衝であると思います。

また、風をよみ天候を予測したり、星座や月をよみ暮らしを営むなど、自然との深い関わりや交わりも見せてくれます。そして、子どもは子どもらしく元気いっぱいです。


島や島に生きる人からは現代人が忘れてしまっている、あるいは切り離されている自然との一体感・生命感覚というようなものが感じ取れる場所の一つであると思います。


また島では、生活の中に「祈り」が息づいているため、拝所がいたるところに存在し、「祈り」が視覚的にも生活空間と同居している事を見る事ができます。そして、その「祈り」は女性によって担われてきており、「祈り」がコミュニティの中心であった事が伺えます。


そのような久高島を舞台に、不可視である「祈り」や「生命」、そして第三部風章の「風」がいかように肉を動かし物理界に現れるのか、現れているのか、またそのメッセージを捉える試みがこの映画の「撮影」の主眼であると、自分なりに理解しているところです。


映画の撮影期間12年の最終年、自然に、流れに、島に学びながら撮影、そして編集を進めていっています。

 

 

 

比嘉真人 / ひがまさと

名古屋生まれ、東京育ち、両親は沖縄出身。東京のテレビ局でドラマや映画の制作に携わった後、2007年沖縄県東村高江へ移住。同村における、米軍ヘリパッド(ヘリ離着陸帯)基地建設に反対する住民運動に深く関わり、撮影記録し上映会活動などを行う。

2013年より、沖縄・久高島の記録映画「久高オデッセイ」の大重監督との縁から「第三部・風章」の助監督を務めている。