風土が人をつくる    

 

az3 = azumi(RABIRABI)

 

 

 

2012年2月、タイのコチャーン(チャン島)を訪れた時、島へ渡るフェリーから見た一番高い山の独特のフォルムに惹かれました。その山には「首狩族が住んでいるからあの山へ入ってはならない」という言い伝えがあると聞きました。  

ホントかもしれない。ウソかもしれない。入った人もいるだろう。山に人間を入れないための作り話かもしれない。でもその言い伝えは、今も活き活きと島の人の心に響いている。  

2011年3月11日。大重監督に初めてお会いしたのは、震災から1ヶ月後の満月に主催した「ネオネイティブミーティング」でした。「久高オデッセイ」をその会で上映したい。監督自身にもゲストスピーカーとしていらしてほしい。見ず知らずのミュージシャンからの申し出に「あーー、大重ですけどね、行きますよー!」とお返事の電話を下さり実現しました。満月の日、100余名が集った森の中で監督が仰った忘れられない言葉があります。

   

風土が人をつくる    

 

私と地球の結びつきは、今やこの言葉に集約できると思う。「ネオネイティブミーティング」以降、個人的には折に触れて(直感的な示唆があったときや、相談してみたいことがあった時に)監督とコンタクトを取っていました。たいていはお電話でした。ライブツアーで沖縄に行った際に事務所へお伺いし、RABIRABIと監督・比嘉さんで大いに飲み交わしたこともあります。「あずみーっ!」と、すぐ隣にいるのに大声で呼ぶ監督の声が、今も脳裏に残っています。そしてそれが最後のコンタクトになりました。  

311の後、地球から'Song of the Earth'という唄を授かりました。先日の'大重祭'で演奏した曲です。この曲は著作権フリーです。誰もが自由に唄い、鳴らし、踊り、いつか '読み人知らず' の唄になればいいと。この曲を通して、伝え継ぐということが、RABIRABIという旅する楽団のキーワードのひとつになりつつあります。2021年07月。コロナウイルス感染症が世界を覆う中、オリンピックが開催され、私の暮らす東京はまさにカオスと化しました。世の中は「想定外」ばかりなのだと人々が感じつつある今、さらに口伝えの意味(意義)は増していると思っています。情報の扱い方。伝え方。口伝の地下水脈を流れるものは何か。  

地震を唄った曲が、波紋のように伝わり染み込んでいく。弾き語ったり、振りをつけて踊ったりする様子が、また波紋のように各地から届く。止むことのない連続性を何往復も体験して、氣づき始めたことがあります。「これを知っておいたら命を守ることができるよ」そんな「優しさ」が、継承の原動力のひとつなんじゃないかな。この知恵を手渡しておきたい、と思いやる心。  

「津波てんでんこ」  

さまざまな意味に捉えられる言葉も、優しい視点を持てば真っ直ぐに理解できる。これを知っておいたら、この島で暮らしてゆける。この星に育んでもらえる。この宇宙に還ってゆける。そんな氣持ちになれるもの。  

風土が人を、私をつくっている 意識の地下水脈を流れる優しさが生命を潤し 活き活きと心に響きつづけるのだろう 監督と知り合ってからの10年で知ったこれらのことを話したら ニライカナイから、また大声で呼びかけてくれるだろうか。

監督、 心健やかに 楽しく 幸せに 生き抜いて 息抜いていますよー

 

 

 

az3 = azumi(RABIRABI)

大阪出身, 東京 高尾在住 '縄文トランス'の異名を持つ、打楽器と声のユニットRABIRABIのヴォーカル。言葉になる前の声を、リズムになる前のウネリのままに掬い上げて放つ。何千年も昔と、何千年も未来、何光年も先と、何光年も後ろ、そんなものを座標軸にして唄っている。福島県の子供たちへのチャリティCD&絵本’Song of the Earth’のリリースプロジェクト発起人でもある。 http://www.rabirabi.com http://sotereleaseproject.com