空にとまる
桑原眞知子

 

狩留家のお風呂にはいつも道草しながら行きます。
ツバメの巣がある小さな無人駅を通り抜け、駅から続く古い街道をそれると三篠川の土手沿いの道にでます。緩やかなスロープを川に降りて行き、水の流れる音を10分だけ録音するのが恒例になりました。
録音しながら水面の細かい光を反射しながら流れる水の表情や、砂粒を巻き上げながら小さな渦を作る様子を観察するのが楽しみに。
川は鳥の越冬地になってるみたいで、水の中や点在する岩の上にとまる鴨は昨年幼鳥だった子達が大きくなって帰って来たのでしょうか、大小20羽もいて近くには白鷺も2羽共存してます。
ある時は近くの岩場にキキョキキョと鳴くツバメ色の小鳥がとまってジーッとこちらを見つめていたり、気づくと川面に小さな虹が見えて青く高い空は静まり返り山は座りワクワクするような時間が流れました。
対岸には銀杏の大木を抱える古い神社があって、狩留家は古来より天皇家のお狩り場で人が入れない場所だったそうです。
米糠酵素風呂に通って2年近くになりました。
被爆二世の体質のせいか首にできたリンパ腺腫瘍をはじめ沢山の病気をしてきたので最後の体質改善にと友人に誘われてきた、先祖の地でもあるこの場所がかけがえのない場所になりました。
お風呂は榎さん貞子さんご夫妻が運営されてます。お手伝いの裕子さんは出産写真を撮ってるというユニークな方。
主婦だった貞子さんがお風呂で皆さんのお世話をされるようになった理由は、ご主人が交通事故で右半身付随の車椅子生活になった時に米糠酵素風呂と出会い7年通って回復したのが切っ掛けでした。お二人とも自分達と同じ不自由な思いをしてる体の悪い人達が少しでも楽になるようにと思われたそうです。来られる方の中には癌治療の方もいます。
65度の米糠は15分入ります。「お風呂に入るのは半日働いたくらいのエネルギーを使いますよ」と榎さん。
一番最初に米糠に包まれた時には海の沖合いで浮かんでる感覚を思い出して瞑想ができると思いましたが。お風呂から出て休憩室で横になると全身から滝のような汗が流れ出します。汗と一緒に体内に溜まってた毒素が流れだし好転反応が始まり免疫力が上がって行きます。
代謝と循環、眠ってた細胞が一斉に起立して動きだし新たな体に作りかえて行くような劇的な感覚を味わってから、毎回過去の病歴を辿って二三日続く好転反応は様々な様相を見せます。
今回の好転反応は強烈でした。心配された貞子さんからメールを頂きました。「歩く一歩一歩!神様がご一緒でありますように」

 

  

 

桑原 真知子/くわはら まちこ

広島県生、空見人。多摩美術大学絵画科油画課卒業。広島大学文学部考古学科研究生修了。草戸千軒町遺跡にて、遺物の漆椀の図柄の模写や土器の復元を行う。シナジェティクス研究所にてCG担当とモジュール作成などを経て、現在は魂を宙に通わせながら作家活動を行っている。