「読書する動物(ひと)」絵の展示のごあんない

海津 研

 

 


読書の秋ですが、皆さんは本が好きですか?「紙の本離れ」とか、「本が売れない」と言われてもう久しい気がしますが、本を読む事は良いこと、すてきなことである、という価値観は、疑いようもないものなのでしょうか。
現在、本を読むことは、テレビやインターネットなどのメディアに比べて、ゆったりと物事が伝えられてゆく時間を、人々に提供してくれるもののように思われていると思います。だから、読書というのはずっと昔からある行為のように思われがちだと思うのですが、果たしてそうでしょうか?
人々の暮らしの中に、紙の本が持ち込まれたのは、そんなに古いことなのでしょうか。
「本」という概念を、巻物から板や石版に書かれた文字列まで含めると、その歴史はそれこそ文明誕生までさかのぼるのでしょうが、現在のように片側が閉じられた紙の束を手で開きながら読んで行く本が現れ、多くの人の手に取られることになったのは、そんなに昔のことでもないような気がします。

ただ、もう一方で、「読書している時間」とは、人々の中でどのような意味を持っているのでしょうか。
書店で、インターネット等で、欲しい本を探すとき、人は何を探してると言えるのでしょうか。それは、生活や遊びの計画に直接必要な情報かも知れないし、何となく楽しそうなものや、いずれ役に立ちそうなもの、また、これまでの自分の生活からは全く連想できないような、新たな出会いかもしれません。本を探すことを切っ掛けに、忘れていた自分の想いを思いだすことだってあると思います。
そうやって、本に関わる時間を思うとき、それは「本」がなくても出来ることかもしれないけれども、ずっと人間がしてきたことの延長にあるような気がして来ます。そして、もしかしたら人間以外の動物も、そのような時間を持つのかも知れないなあ、と。そんな事を考えながら、読書の価値を、見つめ直してみてはいかがでしょうか。

最近、古本市などの本のイベントに参加して、本が好きな様々な人と知り合う中で,ふとそんな事を考えました。
今回の展示では、これまで描いて来た「本を読む動物たち」の絵に新作を加えて、会場のブックカフェでゆっくりお茶をしながら見て頂きたいと思います。

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海津研個展「読書する動物(ひと)」
会場:NORTH LAKE CAFE & BOOKS
我孫子市緑2-11-48
定休日:月・火
open 11:30   close 水~金18:00/土19:00/日・祝18:00
tel:04-7199-3251
northlakecafeandbooks.com

 

 

 

海津 研 / かいづ けん

美術作家。千葉県在住。東京芸術大学デザイン科卒業。テレビ東京「たけしの誰でもピカソ」アートバトルにて第7代グランドチャンピオン。沖縄のひめゆり平和祈念資料館製作の「アニメひめゆり」原画を担当。主な作品に、宮沢賢治の「よだかの星」を原作としたアニメーション「よだか」などがあります。最近は「よたか堂」の屋号で一箱古本市に時々参加しています。