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桑原 真知子

 

 

 

アメリカに行く前に高橋あいさんが二度いさじさんの介護に入って下さって、「オウン コロコロ センダキ マトゥギ ソワーカー」の真言を置いて行って下さいました。「オウン コロコロ」だけでも良いと言われたので、おはしょりの真言を心の中で唱えてると、不思議と気持ちが落ち着きました。

 

 

「澄んだ秋の空気の中で逝きたい」と言ったいさじさんが蒸せかえる夏に逝き、彼女のアパートのベランダに２つだけ生き残っていた水仙の球根を見つけて、自宅の小さな庭に植え替えどうやら元気に葉が伸びて来ました。慌ただしく過ぎた夏の分断された思い出を繋ぎ止めるのに、充分な生命力です。

 

昨年書いて出すのを躊躇してた間に『津久井やまゆり学園』の事件から一年たって、やはり続きを書いておこうと思いました。

 

両親が亡くなって姉と二人きりの生活が8年になりました。

私の姉は年取った子どもです。沢庵をポリポリと無邪気に食べる横顔に、そう思いました。

姉は出産時の事故で、仮死状態でこの世界に登場しました。華奢な体と語彙が少ないせいで、幼い頃からイジメの対象にされて来ました。

姉がイジメられる度に、男の子たちの前に立ちはだかって楯になったお陰で、私の顔には竹槍で突かれた跡があります。「桑原の妹はこわいんでー！」「男みたいなんじゃけー！」と。

 

職場でのイジメに耐えて定年まで勤め、「野良猫が自分に似てる」という姉は、保護した野良猫と穏やかに暮らしてました。ところが一昨年の夏、また心傷つくことがありました。

 

二人で乗ったバスの事故で、姉は前座席の背中についてる手すりに顔面をぶつけてしまいました。一年前のHAP代表の牧さんとのメールでの会話です。

牧さん

 

おはよう御座います

個人のメアドを知らないので私信に使うことお許し下さい

バス事故の処理は保険やさんバス会社中央警察と矢継ぎ早の連絡で少々疲れました

姉は223だった血圧が150迄下がって来たので時間が薬だと思います ただバス車内に乗り合わせてた乗客3人からの言葉に深く傷付いてます　前に木村(牧)さんが「お婆さんで障害があるのが一番大変なんだね」と言われたことが起こりました

 

「あんたら同じ日本人として恥ずかしいよ」「顔を打ったってお金取りたいだけじゃないの」「私なんか足を打ったけど自分のお金で病院に行きますよ」「顔に跡がついてないし大したことないじゃないお婆さんいい加減にしろよ」等々「お婆さんオバアサン」と若い男の人を中心に集団になって姉イジメが救急車が来るまで一時間続きました(その間運転手はバイクの追い越し急ブレーキ事故だったので外で警察の取り調べでした)

言葉の出にくい姉に代わって皆の前に立ちはだかって「あなたはヤクザですか人が怪我をしてるんですよ名誉毀損で訴えますよ」と頭にきて反撃しました

個人が個人として成立出来ない弱く見える者には集団で攻撃をする社会になったと心底恐いと思いました

そしてHAPの子ども達にとっても生きにくい社会だとバスの車内からボーダレスアートHAPへと繋がった瞬間でした

 

桑原

 

>まちこさん

 

昨日で相模原の事件から一ヶ月だそうです。

私はあのような事件が起きたのも社会の問題のように思えてなりません。

人々は、あまりにも自己中心的で余裕がなく、人を思いやる事が出来ず、

競争社会のなかの自分の立ち位置ばかり気にしていますよね。

お姉さんもそんな社会の被害者になられたこと、本当に悔しいです。

障害があろうとなかろうと人を思いやり色んな人が生きている社会が

面白いんだと思える社会にする為にHAPはもっと社会にアピールしていかなくては

いけませんね。９月１３日からまた展覧会をやりますよ～。

「われわれも宇宙人なのだ！」展　よろしくお願いします。

お姉さん、早く元気になるといいですね。

 

 

牧より

 

弥生時代の集落では、身体に障害がある人が周りの人に支えられて、成人になっても生活できていた痕跡があると聞きます。魂の聲に耳を傾け、人を思いやる豊かな人間性を持っていた人達が、かつてこの国にはいました。そして今は。。。幸いにも私の周りには人間力の高い人たちがいて、星が旅人の行く道を教えてくれる様に、困った時には心の行く道を照らしてくれます。

 

 

  

桑原 真知子／くわはら まちこ

広島県生、空見人。多摩美術大学絵画科油画課卒業。広島大学文学部考古学科研究生修了。草戸千軒町遺跡にて、遺物の漆椀の図柄の模写や土器の復元を行う。シナジェティクス研究所にてCG担当とモジュール作成などを経て、現在は魂を宙に通わせながら作家活動を行っている。