アースフリーグリーン革命あるいは生態智を求めて その16 

鎌田東二

 

 

21,東京自由大学セカンドステージの始まりと「大重祭り」

NPO法人東京自由大学第一期・ファーストステージが終わり、第二期・セカンドステージが始まった。滑り出しは順調のようで、何よりだ。

わたしはできるだけ顔と口を出さないようにしている。何よりも、「自由」にやってほしいから。自分たちの「流儀」を創り、貫いてほしいから。

わたしは昔から大の説教嫌いである。説教は人を良くしないと思っている。むしろ、悪くすると。

だから、説教すればするほど、逆効果になると思ってきた。

 

そこで、説教の代わりに、歌を歌うことにした。「人に笑われるリッパなニンゲンになる」ことは20歳頃からの目標であるが、歌によって、笑や涙やもののあはれが通じ、そこから、それを聴き取った人の心の中に自由な思いの発現があると考えるからだ。

 

要は、何でもあり、だ。何でもあり、だが、その人の「それでしかない、それ」を「あらしめて」ほしいとは願っている。「自由」を妨げることなく、その人の「自らに由った」形を実現してほしいと心から願う。

 

だから、できるかぎり、東京自由大学には近づかない。最低限の直接接触だけにとどめたい。そして、できるだけ、自分自身が自由にふるまいたい。その「自由」同士の「自遊」の触れ合いがあれば最高だ。それこそ、望むところだ。

 

さて、大重潤一郎が逝って、来月、2016年7月22日で丸1年になる。

 

そこで、大重潤一郎を偲び、沖縄で「大重祭り」を行なおうとしている。

 

具体的なことは、沖縄映像文化研究所やその周辺にいる人たちが企画運営してくれる。大重潤一郎の命日の7月22日を真中に挟み、7月21日から23日にかけて、沖縄大学と南城市と久高島で映画の上映会とイベントを行なう予定だ。わたしはただそこに身を運び、流れるままに、その場で「自遊」にしたい。

 

同時に、7月2日から、大阪の十三の「淀川文化創造館・シアターセブン」で、大重潤一郎監督の命日=1周忌の7月22日まで、「久高オデッセイ」三部作+「黒神」「光りの島」の3週間ロングランを行なう(1)。ぜひこの機会に多くの方々に「久高オデッセイ」三部作と大重の処女作「黒神」と再生作「光りの島」を観てほしい。そして、今を生きるいのちの根っこを考えてほしい。

 

わたしは、5月28日から30日まで、沖縄・久高島に行ってきた。島の振興をどうするかを話し合う古謝南城市長との対話集会にも参加した。実質人口170人の久高島がこれからどうしていくか、きれいごとではすまない困難さもある。島の未来がどうなるか、簡単には予測はつかない。わかっているのは、島だけの力では、島を持続可能な形で運営していくことには限界があるということである。だから、IターンやUターンを始め、いろいろな人の関与と力が必要になってくるはずだ。

 

「久高オデッセイ」三部作で、2002年から2014年までの12年間をドキュメントし、見守り続けてきた故大重潤一郎監督の遺志を引き継いで、わたしもその「島」のいのちと未来を見つめたい、見守りたい。そして、自分にできることがあれば、出来る限りのことをしてみたい。

 

それが、大重潤一郎の遺志に叶うことになり、鎮魂供養になると思うからだ。

 

また、その前哨戦というわけではないが、6月25日(土)には大阪士日東成区でイベントを行なう(2)。『久高オデッセイ第三部 風章』の上映と、ランドスケープや聖地を研究する、大阪府立大学第9学系群戦略的研究部門准教授の花村周寛(ちかひろ)さんと特別対談を行なうのである。花村さんの専門はランドスケープ研究だが、空間デザインや役者など、さまざまな活動を実践しているという。また、聖地の研究も熱心に行なっているので、まもなく聖地巡礼丸50年となるわたしとの対談はさぞかし盛り上がることだろう。 花村さんは、病院で行ったインスタレーション作品「霧はれて光きたる春」で 日本空間デザイン大賞と日本経済新聞社賞を受賞している。https://www.youtube.com/watch?v=UJSDt8C-bJM

 

これまた、前哨戦というわけではないが、関連の催しとして、6月28日(火)の18時25分~20時30分に、京都駅前アヴァンティ9階龍谷大学響都ホールで、「久高オデッセイ第三部 風章」上映+解説「島の祈り」(グリーフケア公開講座:龍谷大学+上智大学主催)を行なう(3)。これもまた、京都近郊の方々に観てほしいと思う。

会場はゆったりしており、スクリーンも大きく、300席はあるホールなので、じっくりと観賞していただけるはずだ。わたしも「大重祭り」の「前夜祭」として、心を込めて、石笛・横笛・法螺貝のわが三種の神器を奉奏しつつ、大重潤一郎を亡くした「グリーフ」に向き合いたい。

 

最後に、拙著『歌と宗教――歌うこと。そして祈ること』(ポプラ新書、ポプラ社、2014年)に収めた歌を引いておきたい。佐藤義清こと西行法師と、鎌田東二ことtony東行との時代を越えた「鎮魂歌合戦」を。この「歌合わせ」を、大重潤一郎に捧げたい。

 

西行:よしの山 こぞのしをりの道かへて まだ見ぬかたの 花をたづねん

東行:花祭り 鬼さえ鬼と知らずとて まだ見ぬ君の 天の乳房か

西行:年たけて またこゆべしと思ひきや 命なりけり 小夜の中山

東行:いのちはてて 超えてゆくらむ奥山を 照らせ今宵の 不死の新月

西行:心なき 身にもあはれは知られけり 鴫立つ沢の 秋の夕暮

東行:身も心も 尽き果ててなお 秋の気配ぞ 立ち惑いける

西行:仏には桜の花を奉れ 我後の世を人弔はば

東行:仏には仏の道の巡り花 神には神の魂寄りの歌

西行:願はくは 花の下にて春死なむ そのきさらぎの 望月の頃

東行:願うても願うてもうち砕かれて 木端微塵の流星の人よ

西行:身を捨つる 人はまことに捨つるかは 捨てぬ人こそ 捨つるなりけれ 

東行:捨つるべき 何ごとのあるや花時雨 道なき道に 拾う神あり

 

(1)「久高オデッセイ第三部 風章」@大阪

大重潤一郎監督作品

久高オデッセイ 第三部 風章

2015/日本/95/カラー)

2016/7/2()7/22()

同時期上映

大重潤一郎監督作品 特集上映

『久高オデッセイ 第一部 結章』
『久高オデッセイ 第二部 生章』
『黒神』
『光りの島』

※詳細・上映スケジュールは→こちら

7/9()12:40~「久高オデッセイ 第三部 風章」上映後
鎌田東二氏 トーク予定 

 

(2)「久高オデッセイ第三部 風章」@大阪

日時:625日(土)14:00-17:00(開場:13:30

催し:「久高オデッセイ第三部 風章」上映

解説「島の祈り」鎌田東二先生と花村周寛さんの対談

会場:大阪市東成区中本3丁目10-2 (フラット)

参加費:2,000
定員: 35名(先着順)
参加される方は下記のアドレスへ氏名・連絡先を明記のうえお申し込みください。定員に達し次第締め切ります。
info@flwmoon.net
*会場の
(フラット)は地下鉄中央線緑橋駅から徒歩5分。もと印刷工場を改装したクリエイティブシェアのスペースです。

 

3「久高オデッセイ第三部 風章」@京都

日時:628日(火)1825分~2030

催し:「久高オデッセイ第三部 風章」上映+解説「島の祈り」グリーフケア公開講座(龍谷大学+上智大学主催)
場所: 京都駅前アヴァンティ9階龍谷大学響都ホール
当日参加費: 2500
問い合わせ・予約: 上智大学大阪サテライトキャンパス

電話:0664508741

 

 

 

鎌田 東二/かまた とうじ

1951 年徳島県阿南市生まれ。國學院大學文学部哲学科卒業。同大学院文学研究科神道学専攻博士課程単位取得退学。岡山大学大学院医歯学総合研究科社会環境生命科 学専攻単位取得退学。武蔵丘短期大学助教授、京都造形芸術大学教授を経て、現在、京都大学こころの未来研究センター教授。NPO法人東京自由大学理事長。文学博士。宗教哲学・民俗学・日本思想史・比較文明学などを専攻。神道ソングライター。神仏習合フリーランス神主。石笛・横笛・法螺貝奏者。著書に『神界のフィールドワーク』(ちくま学芸文庫)『翁童論』(新曜社)4部作、『宗教と霊性』『神と仏の出逢う国』『古事記ワンダーランド』(角川選書)『宮沢賢治「銀河鉄道の夜」精読』(岩波現代文庫)『超訳古事記』(ミシマ社)『神と仏の精神史』『現代神道論霊性と生態智の探究』(春秋社)『「呪い」を解く』(文春文庫)など。鎌田東二オフィシャルサイト